本メルマガは、週1回程度を目安に以下の3つのパートから情報をお送りさせていただく内容となっております。

  • 「Paradigm Shift -新しい価値観-」
  • 「Unique Asset Management -独自の資産形成-」
  • 「Zoom In -BALI or Philippinesのリアルな生情報-」
 

■Paradigm Shift -新しい価値観-


私がどの国での事業を展開するかを検討した時に指標にしたのが、「人口ボーナスと人口オーナス」
この人口ボーナス・人口オーナスとは何なのかについてを見ていきたいと思います。日本経済と人口の
深い関係について知れば少子高齢化の問題点もよりわかりやすくなるはずです。

“生産年齢人口が従属人口を大きく上回るもしくは増加し続けている状態”を「人口ボーナス」といいます。

生産年齢人口とは、15~64歳のいわばメインで働いて経済を支える人々のこと。一方で従属人口とは14歳以下
もしくは65歳以上の子ども・高齢者を指します。人口ボーナス期の国は教育や医療、年金などの社会保障に対
する負担が少ない一方で税収が多く、社会インフラの整備が進みやすいです。さらに消費も活性化するため国
全体の経済が回りやすくなるという大きなメリットがあります。

日本は1950年代から1990年代半ばまで人口ボーナスに該当し、実際その期間に大きな成長を遂げました。
経済にとってプラスに働く人口ボーナスですが、一度終わると二度と来ないといわれています。現在人口ボー
ナスに該当する国としては、インド、フィリピン、イラン、ナイジェリアなどが挙げられます。

人口オーナスは人口ボーナスと真反対に、“働く人の数を子どもや高齢者など支えられる人の数が上回る状態“
のことを指しています。

オーナス(onus)という単語は「負担・重荷」を意味します。すなわち従属人口が生産年齢人口を超え、人口構成
が経済にとって負担となっている状態を意味します。日本は1990年代から人口オーナスに陥っており、今では世
界でも特に人口オーナスの進む国となってしまっています。アメリカ、イギリス、ドイツ、中国といった国々も
すでに人口オーナスに突入しています。

日本における人口ボーナスと人口オーナスの推移

かつての日本は人口ボーナスのメリットにより大きな成長を遂げましたが、現在では人口オーナスに陥ってしま
っています。

では、人口オーナスは現在の日本経済にどのような悪影響を及ぼしているのでしょうか?
3つのポイントにわけてみていきたいと思います。

1.経済が成長しない
生産年齢人口が減るということは、働く人の数が減るということです。当然、経済成長の指標である国内総生産
(GDP)は停滞、もしくは落ち込むことになります。また、増加した高齢者が貯金を切り崩すことで社会全体の富
の蓄えも減少しやすくなります。

日本の生産年齢人口は2019年3月1日時点で7,519万9,000人で全体の59.7%。1992年の69.8%をピークにその割合は
減少し続けており、2065年には4,529万人(全体の51%)にまで落ち込むと予想されています。

日本の人口及び人口構成の推移

2.社会保障制度の維持が難しくなる
高齢者が増え、生産年齢人口が減ることで生じるのが年金などの社会保障費の維持が難しくなる問題です。
日本の年金制度は高齢者の年金を生産年齢人口が負担する賦課方式で成り立っているため、人口オーナスが進むほ
どに現役世代の負担は重くなります。

2019年3月1日時点で現役世代2.1人当たり1人の高齢者を支えなければいけない状況となっています。
1950年には12.1人当たり1人だったことを考えると、負担が大幅に増加したことがわかりやすいでしょう。
ちなみに2065年には現役世代1.3人当たり1人の状況になると予測されています。

3.労働環境が悪化する
生産年齢人口が減ると社会は人手不足が加速することになります。そのため、穴を埋めるための長時間労働が増加
する可能性があるのです。
ワーク・ライフバランスがワーク(仕事)に傾いた企業が増えれば子育てがしにくくなるため、より少子高齢化が
進む負のスパイラルに落ち込む恐れもあります。

人口オーナス下で日本社会はどのように変わっていくべきなのでしょうか?
二度と人口ボーナスは来ないといわれる中で考えうる対応策を見ていきましょう。

生産年齢人口が減少する中で生産力を高める手段として挙げられるのが、高齢者や出産後の女性、介護に追われる
労働者などこれまで仕事から離れることの多かった人員が働ける世の中にしていくことです。そのためには多様な
人材の雇用促進や彼らが働きやすい職場環境の整備などが求められるでしょう。多様性という意味では外国人労働
者の参入もひとつの解決策となるわけです。

職場や経済紙でここ数年目にする機会が増えた生産性という言葉。労働に関する生産性は正確には労働生産性とい
い、労働者もしくは労働時間あたりの成果を意味します。
労働生産性を高めることで人口が減ってもこれまでと同じかそれ以上の成果が出せるというロジックです。そのた
めには最新テクノロジーの活用や業務の効率化が欠かせません。チャットGPTにみられるようにAIを活用することも
それに大きく貢献するはずです。

人口オーナスを止めるためには少子化を改善していくしかありません。そのために子どもをつくりやすい世の中を
生み出す必要があります。具体的には2030年ごろまでに合計特殊出生率(15~49歳までの女性が生涯に出産する子
どもの平均人数)が2.07にならなければならないといわれています。2018年の合計特殊出生率は1.42。2.07の達成
は難しい状況ですが、子どもが増えることで人口オーナスの負担が軽減されることには変わりありません。

我々のワークスグループもすでに行っている外国人人材の登用に視点が行きがちですが、根本的なところでいうと、
子育て世代への資金の還流が重要だと思います。65歳以上が50%以上持っていると言われる資産をいかに次世代に
早いうちに贈与・譲渡・相続をしていくかを制度設計できると良いのかもしれませんね。

こういうと白い目でみられるかもしれませんが、シングルマザーも多くなっている昨今に対して、一夫多妻制とい
う制度はかなり効果的ではないかとも思っています。養える体力のある人が多くの人を養う。これは凄く理にかな
っていると思う今日この頃です。


 

■「Unique Asset Management -独自の資産形成-」


上記で人口ボーナスに触れたので、それを投資的視点からみるとどうなるかをみていきましょう。
総人口における生産年齢人口の割合が高まれば、豊富な労働力が経済活動を活発にするだけでなく、教育や医療、
年金などの社会福祉負担が少なくなり、資金を新しいビジネスに回すことができるようになる。
これが、人口ボーナス(期)にある国が経済成長する仕組みです。

ハーバード大学のD・E・プルーム教授が1998年に発表した論文「新興アジアにおける人口転換と経済的奇跡」によ
ると、1960~90年にかけて生じたアジア諸国の成長の多くは、少なからず人口ボーナスの影響をうけていたといわ
れています。

もちろん上の章で記載したように日本も例外ではありません。日本が圧倒的な経済成長を成し遂げた1960年代から
90年代初頭、日本も人口ボーナス(期)にあった。人口ボーナスの影響は株価の推移にも如実に現れています。
下の図を見れば、人口ボーナス(期)のピークが株価と連動していることがわかるはずです。

図1:人口ボーナスと株価の関係(日本)

※上記(人口ボーナスのスタート)は生産年齢人口がその他の人口の1.8倍の時としている

日本はこの期間に生産年齢人口の増加にともなう労働力の拡大によって工業化を加速し、高度成長を実現することが
できたわけですが、間違いなく日本の経済成長は、人口ボーナスなしには成しえなかったはずです。

次に、同じ東アジアである韓国と中国に目を向けてみたいと思います(図2)。
韓国の場合、人口ボーナス(期)は1983年頃に始まり、2015年頃をめどにピークを迎えています。その間の成長は、
株価にして約15.3倍。中国のボーナス期も韓国と数年の誤差しかないが、この期間に中国が世界有数の経済大国とし
て頭角を現したことは説明するまでもないでしょう。

結果として、人口ボーナス(期)にあった中国では、2012年に世界全体のGDP比において11.5%を占めるまでに成長
した。ただし、両国ともに現在はボーナス期のピークを過ぎているため、これまでと同様の速度で成長し続けること
は難しいという予想がされるわけです。

図2:人口ボーナスと株価の関係(韓国・中国)

次に人口ボーナスを享受する国はどこらへんの国でしょうか?
経済発展の話題でよく名前があがる新興国、ブラジルとインドネシアを例に見てみたいと思います。

図3:人口ボーナスと株価の関係(ブラジル・インドネシア)

ブラジルは、2020年に人口ボーナス(期)がピークを迎えると見込まれており、これからの成長は今よりもゆるやか
になるであろうと予測されている。インドネシアは、2030年まで続くとされています。ただし、定義によってやや異
なり、2030年代~2040年代まで続くともいわれています。

そんななか、確実にこれから人口ボーナス(期)のピークを迎えるとされているのが「インド」です。
インドの人口ボーナス(期)は2011年~2040年の約30年間だと予測されており、現在はその約12年目にあたるとされ
ています。つまり、あと20年近く人口ボーナス(期)が続く見込みということです。
世界がインドに注目する所以はここにあるともいえるわけです。

図4:人口ボーナスと株価の関係(インド)

もちろん、生産年齢人口が増加しさえすれば、必ず大きな経済成長に繋がるとは限らない。生産年齢人口の増加を経
済成長に繋げるためには、増加する生産年齢人口を労働力として吸収しなければならないうえ、その労働力が産業の
活性化を加速する必要もある。

しかしその点からいうと、インドはIT大国としてのポテンシャルがあるほか、公用語のひとつとして大きな地位を英
語が占めていることなどから、グローバルビジネスを発展させる土壌が整っているともいえます。
すでに、人口で中国を抜き、2050年には中国に次ぐ世界第2位の規模に成長するとみられているインド(PwC Japanグ
ループの調査レポート「2050年の世界」)。「中国の次はインド」は間違いない流れでしょうね。

日本、中国・韓国、ブラジル・インドネシア、インドとみてきましたが、それぞれの国でどんあビジネスが支持され
ているかを見ると、その変遷も理解しやすくなりますね。
日本では介護ビジネスや60歳以上をターゲットにしたシルバービジネス。一つの要素としては再生医療まわりのビジ
ネスも伸びしろは大きいですね。中国・韓国では飲食事業を始めとしたらローカル向けのサービス事業などです。
ブラジル・インドネシアはインフラ事業や不動産事業の伸びしろは大きいですね。
こんなことからも人口ボーナスを検証することが投資の指標に活用できるということもご理解頂けると思います。


 

■「Zoom In -BALI or Philippinesのリアルな生情報-」

電気は生活にとって欠かせないインフラのインドネシアの電気料金、電力会社などを元に電気事情についてご紹介し
ます。

以下は、インドネシアの一人あたりの1か月の電気料金の支出の推移を表した図です。
下図より、毎年電気料金の支出は増えていることがわかります。

インドネシアの一人あたりの平均電気料金の支出は2022年時点で、Rp39,860(約374円)/月と、前年と比較すると
7.67%増加しています。

地域別で見ると、インドネシアの都市部では、一人当たりRp 54,738(約514円)/月で、農村部では、一人当たり
Rp 19,721(約185円)/月と都市部の方が農村部の2倍以上の支出があると言えます。

また、電気料金の支出額は経済状況によっても異なり、富裕層は一人当たりRp 112,198(約1,055円)/月の支出があ
るのに対し、最貧困層は、一人当たりRp8,269(約77円)/月の支出となります。
電気料金の支出から、インドネシア国内での格差があることがわかります。

インドネシアでは、電気料金の支払いは前払い制で、電気料金分をチャージして支払いを行うことが一般的です。
インドネシアにおける電気料金の支払い方法は以下の通りです。

アプリケーションでの支払い
インドネシア国有の電力会社PLNのアプリケーションを通して、希望の金額分をチャージして前払いの支払いをするこ
とができます。

SMS支払い
SMSで新しいメッセージを発行し、お客様IDなどを入力してSMSを送信して支払うことができます。
プリペイド式の電話通信料プルサより電気代金が引かれる仕組みになります。

ATMでの支払い
ATMの電気料金支払いメニューを選択し、そこに顧客番号を入力すると電気料金をチャージすることができます。

ECサイトでの支払い
TokopediaなどのECサイトを経由して電気料金の支払いをすることができます。

最近では、上記以外にも、インドネシアで広く利用されている配車サービスGojekのアプリケーション内の支払い
”Go Pay”でも電気料金の支払いが可能になっています。

インドネシアでは、頻繁に停電が起こり、2020年の1年間で、平均12.7時間停電が起きていることがわかっています。
月で換算すると月に1時間は定期的に停電が起きているということになります。
インドネシアで起こる停電の主な原因は以下の3つです。

・漏電
道路の電線が整備されていないために起こる
・計画停電
国有電力会社のPLNが保守点検などの理由で行います
・自然災害
雷、洪水、地滑りなどの自然災害も要因のひとつです

インドネシアでは停電が頻繁に起こるため、懐中電灯や、家庭用バッテリーなど停電に備えている家庭がほとんどです。
停電になると、経済活動が一時的に停止され経済的損失にもつながりかねないため、今後インドネシア政府の対策が必
要と言えます。

インドネシアの発電所の中で石炭火力発電所の割合が多く、2023年時点で全国に234基の発電所が存在し、総発電量は、
43.35GW(ギガワット)となります。
インドネシアにおける発電量上位10位の電力会社は以下の通りです。

一番の発電量を誇るのはインドネシアの国有電力会社のPLNの8.43GWで圧倒的な発電量となっています。
2位のIndonesia Power Suralayaと10位のIndonesia PowerはPLNの子会社で国有の電力会社となりますが、それ以外の
7つは民間の電力会社となります。

現在、インドネシアでは、国営、民間両方で建設中、または建設前の発電所が存在しており、そのうちの58%は産業用
のエネルギーを供給するための専門的な発電所となる予定です。

また、インドネシアの石炭火力発電による二酸化炭素の排出量は世界6位で、2億1400万トンにも及びます。
今後更に発電所建設の計画をしているインドネシアでは、二酸化炭素の排出量を減らす対策が必要であると言えます。

今回は、インドネシアの電気事情についてご紹介しました。
停電の問題や、二酸化炭素の大量排出の問題など、今後インドネシアの課題となる点が見えてきました。日本も、イン
ドネシアと同じく火力発電による二酸化炭素の排出量が多い国の一つです。
だからこそ、お互いに協力しながら、二酸化炭素の排出量を減らすことが急務であると言えます。
(出典:インドネシア総合研究所)