■「Zoom In -BALI or Philippinesのリアルな生情報-」
フィリピン人と銀行 第1回
フィリピン人が銀行口座にお金を入れないという話を聞きますが、どうしてなのでしょうか?
数回にわたってその原因と理由をご紹介したいと思います。
フィリピン人が銀行口座にお金を入れない7つの理由
ほとんどのフィリピン人は銀行口座にお金を預けていません。お金を預けるどころか、銀行口座そのものを持ってい
ません。
フィリピン中央銀行の調査によれば、2017年の口座保有率は、わずか 22.6%でした。日本をはじめとする先進各国と
は比較にならないほどの低い普及率です。
口座を持ったことがない約8割のフィリピン人は、銀行とは無縁の生活を送っています。彼らは過去に口座を開こう
としたこともなく、口座の作り方さえ知りません。
フィリピン人と銀行の関係は、銀行口座がなければ日常生活さえ成り立たない日本の事情とは大きくかけ離れていま
す。
いったいなぜ、大半のフィリピン人は銀行口座を開き、お金を預けようとしないのでしょうか?
その理由をたどることで、フィリピンという国家の抱える深刻な問題が浮き彫りになってきます。
1.口座保有率の上昇こそが貧困脱却の鍵
一般に銀行口座保有率の低さは、 貧困の度合いが深いことを表しています。
貧困をなくすために世界規模で取り組んでいる活動として「金融包摂」があります。日本語にすると固い言葉ですが、
”Financial Inclusion”を訳した言葉です。
「金融包摂」とは、貧困者や中小規模の事業者など、これまで基本的な金融サービスにアクセスすることが難しかっ
た人々に、手頃なコストで金融サービスを提供していこうとする取り組みのことです。
近年、貧困を実際になくすために最貧困層の人々に小規模の無担保融資を行う取り組みが、世界的に広く展開されて
います。この活動を「マイクロファイナンス」と呼びます。「 マイクロファイナンス」も「金融包摂」の一種です。
「マイクロファイナンス」はフィリピンでも活発に行われており、最貧困層の人々のセーフティネットとして機能し
ています。
※弊社がフィリピンで展開していますマイクロファイナンス
https://wwcam.co.jp/lp2/
どんなきれいごとを並べるよりも、わずかな現金こそが貧困から抜け出す糧になることは、世界各地で実証されてい
ます。
世界銀行グループの前総裁を務めたジム・ヨン・キムは「 金融サービスへのアクセスは、貧困からの脱却を後押しす
る。我々は、2020年までに全ての人に金融アクセスを普及させるという極めて意欲的な目標を設定した。そして今、
この目標に大きな前進が見られる」と述べています。
フィリピンでは、新たに開くことが難しい銀行口座に代えてマイクロファイナンス専用の口座が設けられているため、必ずしも銀行口座がなければ小口融資を受けられない状況にはないものの、貧困層に属する人々の多くが銀行口座を持つことで様々な救済が可能となり、貧困からの脱却を促すことは間違いありません。
フィリピンに横たわる貧困の格差を是正するためにも、口座保有率の上昇が期待されています。
しかし、これまで紹介しているように、フィリピンでは年度ごとの口座保有率こそゆるやかに伸びてはいるものの、全体としては開発途上国のなかでも明らかに低迷しています。
なぜフィリピンでは、口座保有率がこれほどまでに低いのでしょうか?
2.フィリピン人が銀行口座を持たない7つの理由
フィリピン人が銀行口座を持たない、あるいは持てない理由として、Fast Facts: Filipinos and Moneyには7つの項目があげられています。
日本語に直すと、次のようになります。
1.お金がない 20%
2.口座を作る必要がない 18%
3.銀行を信頼していない 17%
4.銀行が家から遠い 16%
5.口座を開くために必要な書類を用意できない 10%
6.銀行員の対応が気に入らない 9%
7.口座の維持費用が高すぎる 9%
この7つの理由について、掘り下げて見てみましょう。
フィリピンセブ島留学の総額は?期間別の費用の内訳
留学費用について無料相談する!
その1.お金がない
フィリピン人が銀行口座を持とうとしない理由のトップに「お金がない」があげられています。誰でも簡単に想像が
つく答えといえるでしょう。
フィリピンという国は大多数の貧困層と一部の中間層、ごく少数の富裕層で成り立っています。2017年に行われた民
間調査機関 SWS(Social Weather Station)の調査によると、フィリピン国内で「自分の家庭が貧しい」と答えた人
の割合は47%にも上っています。
銀行口座を開くということは、お金を銀行に預けることを意味します。預金はお金に余裕があって、はじめてできる
ものです。
ほとんどの貧困層の人々には預金をする余裕などありません。家のなかにある小銭をかき集めさえすれば預金ぐらい
できるだろうと考えるのは、あなたが日本人だからです。
2001年に「世界がもし100人の村だったら」という本がブームになりました。そこにはこんな記述があります。
もし銀行に預金があり、お財布にお金があり
家のどこかに小銭が入った入れ物があるなら……
あなたはこの世界の中でもっとも裕福な
上位8%のうちのひとりです
銀行に預金があること、財布にお金が入っていること、家のどこかに小銭を貯めておく入れ物があること、この3つ
を満たしているのは、世界の中でもっとも裕福な8%の人々だけです。
でも日本人であれば、誰もがこの3つを満たしていることでしょう。私たちはその状態を「裕福」と感じることなど、
まずありません。
しかし、私たち 日本人が当たり前と思っているその状況を「なんて裕福で幸せなんだろう」とうらやましく見つめて
いる人々が、世界中にあふれています。
世界の92%の人々は、日本人のような恵まれた状況にはおかれていません。その92%のなかに、大多数のフィリピン
人が含まれています。
フィリピンの貧困層には小銭を貯める余裕などありません。小銭も含めて家のなかにあるお金をすべてかき集めて、
その日に口にできるものを必死に探す毎日が続くだけです。
彼らの日々の暮らしのなかに「預金」という考えが潜り込む隙間は一切ありません。そもそも フィリピン全体で預金
ができるほどの余裕がある人は、わずか20%ほどに過ぎません。
日本人では想像さえできない貧困の深さに、多くのフィリピン人は喘いでいます。銀行にお金を預けておく余裕など、
大多数のフィリピン人は持ち合わせていないのです。
さらに物理的にもフィリピンで銀行口座を開くハードルは高く設定されています。口座を開くための最低預金額が設
定されているからです。
日本の銀行で普通口座を開く際には、最低預金額の規定がありません。1円以上のお金を預けるだけで口座を開設でき
ます。
ところがフィリピンは違います。各銀行によって最低預金額は異なりますが、2,000P(約4,000円)ほどの金額が設定
されていることが一般的です(最近は5,000Pの銀行も多い)。
つまり、 最低でも2,000Pの所持金がなければ、口座を開設できません。
4,000円という金額は日本人からすれば取るに足らない金額ですが、首都マニラの最低賃金が500P(約1,000円)であ
ることを考えると、4日分の労働の対価に値します。
仕事のない貧困層には手が届かない金額であることはもちろん、一部の中間層にとっても簡単に手放せる金額ではあ
りません。
最低預金額の制度は、フィリピンで口座を設けるために越えなければいけない第一の関門です。
次回は2つ目の理由
口座を作る必要がないからご紹介いたします。
了
|